草葺安全屋根改修工事のながれ‐その3

茅葺屋根_03

前回に続き、今回も草葺安全屋根改修工事のながれについてということで、3回目になりました。

 

前回は、既存の茅葺屋根を残したまま新しい屋根を葺きますと書きました。

 

少しよく分かりそうな写真をと思ったのですが、現場では作業、仕事優先のため、ついつい写真を撮ることを忘れてしまったりしていることが多くなかなかいい写真がないですね。

 

 

それで、少しでもということで、ご覧の写真を用意してみました。今回の屋根葺材は、中山化成の金属成形板、ニュールーフィックスという材料で葺くため、縦方向に垂木のように下地になる材を取り付けた上に、屋根葺材であるニュールーフィックスを固定するための横桟を取り付けていきます。

 

下地がほぼ出来上がってくると格子状に組んだように見えますね。普通の屋根と言いますか、新築などで今風の家を建てた場合の屋根は、この下地木材の上に野地板を張るのですが、草葺安全屋根改修工事でニュールーフィックス葺の場合は、建物への負担も考え、軽量化も兼ねて野地板はなしになります。

 

ちなみに野地板は、以前は杉板などを少し間隔を開けて張っていたことが多いですが、最近はほぼ100%と言っていいぐらい構造用合板をきっちり敷きこんで張っていきます。これは、屋根面の剛性を高めて構造的にも有利に働かせる意味もありますが、屋根葺材が薄いスレートや金属板で葺くようになったことも影響しているのでしょうね。

 

たまに2×4住宅含めOSBボードという木片チップを板状に固めた合板を使う場合もありますが、こちらは湿気で伸び縮みする割合が大きいので、密に張らずに少し隙間を開けて張っていきます。

 

ちょっと話がそれましたが、現在草葺安全屋根改修工事の主流(弊社では)といっていい、ニュールーフィックスの場合は、こんな感じで木下地が格子状に組み上がれば下地工事は、ほぼ完了、これから屋根葺工事が始まるということになります。

 

そうそう、その前に、屋根の三角になった妻面、破風、そして棟などの金属板張りが屋根葺材の取り付け作業に先行して行われます。

 

茅葺屋根_04 これらの部分は、意匠的にも凝る場合もありますし、家紋を取り付けたり、鬼瓦をつけたりと、出来上がった際にもデザイン的に目立つ部分であり、お施主さんの関心も高かったりしますので、多少時間をかけながらも丁寧に取り付け作業などをしていくこととなります。

 

このような作業と平行して順次屋根葺材である金属成形板を取り付けていきます。この材料はフッ素樹脂塗装などが施されたガルバリウム鋼板を成形したものですが、瓦が6枚つながったような形に一枚の金属板が整形されています。

 

つまり一度張り出すとけっこう早く張り上がっていくことになります。この屋根葺材を葺くのは、慣れた職人にはあまり難しくないのですが、やはりここまでの下地工事とその他の化粧部材の加工、取り付けが重要だということになります。

 

がんばって一気に屋根材を張り上げていけば、最後は4方に伸びた隅棟の化粧材の取り付け、鬼瓦の取り付けなどを済まし、ケラバや、他の屋根との取り合い部分などを丁寧に作業して屋根葺工事は完了することとなります。

 

完了後の写真では、先ほど書いた鬼瓦などがないようですが、こちらのお宅ではシンプルに仕上げるということで、鬼瓦や隅棟の化粧材などが省かれ、スッキリした形に仕上がっています。

 

また、前回書いたしころの部分ですが、建物南面と西面には、和瓦葺きのしころが設けられましたが、北面は以前に増築された部分があり、ここは大屋根部分と同じ金属成形板で葺かれました。

 

この部分は、屋根勾配が非常に緩いため、瓦などでは雨漏りしてしまいますが、こういうところでは、金属葺きの屋根は大活躍です。

 

茅葺屋根_05

最後に再び建物正面の南側から見てみるとこんな感じになりました。

 

まだ工事中の風景ですが、綺麗になったのではないでしょうか。

 

鬼瓦がありませんので、非常にシンプルな感じですが、歴史的に鬼瓦に込めてこられた意味、思い等を別にすれば、デザイン的な要素が大きい部分ですから、それらを省くことで工事費も押さえられますし、将来よく痛む部分でもありますので、メンテナンスの手間と費用も抑えられる可能性がでてきます。

 

ここは、お施主さんのお考えとともに、費用対効果なども考えつつ選択してく部分となるでしょうか。

 

990609_銅板葺屋根_01

ちなみに、こちらの写真は銅板の金属成形板で葺かれた屋根です。

 

棟には屋根葺材と同じく銅板で制作された鬼瓦がのっています。

 

また四隅の棟にも化粧材が施され、その先端にも小型の鬼瓦が取り付けられて、各方面に鋭い眼差しを向けて屋根、そして住まい全体を守っているといった感じでしょうか。

 

ちなみに、大型の鬼瓦が棟に2ヶ所、小型の鬼瓦が計8ヶ所取り付けられています。

 

以上、今回は、ガルバリュウム鋼板製の金属成形板であるニュールーフィックスという屋根材で葺かれた屋根の仕上がるところまでをご紹介しました。

 

一応、これで、草葺安全屋根改修工事の流れとしては、簡単ですがわかっていただけたのではないでしょうか?

 

工事としては、この他にも様々な作業が伴いますし、足場を仮設して作業しますので、その過程もあったりし、もう少し複雑になるというのが実態です。

 

せっかくの茅葺屋根を鉄板で覆ってしまうなんて馬鹿な?と言われることもあるかもわかりませんが、こうやって多くの茅葺屋根の民家が21世紀の現在まで現役で活用され、地域に残されてきた現状を見れば、その意味、意義の大きさもご理解いただけるのではないかと思っています。

 

末永く、歴史ある建物が大切に使い続けられ、ご家族の安全、安心を守る大切な住まい、砦となっていくことのお手伝いをさせていただき、感謝いたしております。

 

本当にありがとうございます。

 

 

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